Tromsøまでの道のり

Camp&Expedition

ノルウェーツアーのため、羽田よりヘルシンキ行きのフィンエアーに搭乗。ロシア上空を避ける北回りの航路で、北極点付近を通過する13時間のフライトとなった。

旅のお供は、先日海で出会ったアホウドリをきっかけに思い出した吉村昭の『漂流』と、柴田錬三郎の『孤剣は折れず』。映画はプライムビデオの『Bee Keeper』糸島の玄界灘男推薦である。

ビールは一本無料だし、フィンエアー好きの憧れ、ブルーベリージュースも飲み放題(だと思う)だし、隣の若いカップルは(おそらく)初めてのフィンランドにテンションが上がっちゃって写真を撮りまくっている。なんて心が和む13時間。

あっという間にフィンランド・ヘルシンキに到着した。日本ーヘルシンキ便は夜発・現地早朝着の便が多く、今回も朝の4:30にヘルシンキ空港へ降り立った。

すると、電波圏内に入った携帯へメールやメッセージが届き始め、その中にフィンエアーから、7:25発トロムソ行きのフライトがキャンセルになったという知らせが届いていた。天候ではなく、機材が原因でのキャンセルのようで、すぐさまアプリ上に代替便のチケットが届いた。

以前なら航空会社のカウンターに並んで詳細を確認し、チケットを発行してもらわないといけなかったはずだが、今では到着ゲートから移動している間に、携帯上で確認できてしまう。これ以上、世の中は便利になっていくのだろうか。

ところがである。

今回のツアー参加者は、日本から5名+私(武田まさし)、そしてここヘルシンキでシンガポールから来るお客様1名と合流し、同じ7:25発の飛行機でトロムソへ移動する予定だった。

しかし、なんとこの合計7名が3パターンの飛行機に割り当てられていた。

Team A:私を含めた4名
7:20 ヘルシンキ → オスロ 7:50着
9:10 オスロ → トロムソ 11:00着

Team B:東京から来た2名
8:05 ヘルシンキ → ベルゲン 10:05着
11:15 ベルゲン → トロムソ 13:20着

Team C:シンガポールより1名
11:10 ヘルシンキ → オスロ 12:05着
14:30 オスロ → トロムソ 16:20着

もうミステリーのアリバイ工作みたいである。

どうも空いている便へ、それぞれ自動的に割り当てられたようで、まずTeam Aがオスロ行きの便に乗り込む。

みんなが好きなマリメッコを覗く暇もない。

ただただ私たちの心配は、荷物がちゃんと人間と一緒に動いてくれるかどうかだった。キャンプ道具やカヤックウェアが入った荷物がなくなってしまうと、その後の受け取りなどを考えるだけで頭が痛い。

羽田でチェックインした預け荷物はトロムソ行きになっている。しかし乗り換えのオスロでは、航空会社がフィンエアーからスカンジナビア航空に変わる。そのため、オスロでこの荷物を受け取るのか、受け取らないのかも不明のまま、私たちは到着ロビーへ降り立った。

乗り換え時間は約1時間。

携帯に表示されているトロムソ行きチケットのQRコードでは、乗り換えゲートを通過できず、やはり一度預け荷物を受け取り、再度チェックインが必要ではないかということになった。朝早いせいか乗換案内のデスクにはまだ誰もいない。聞く相手も見つからず仕方なく荷物の受け取りゲートへ向かう。

しかし、ここを越えてしまうと、またセキュリティを通過しないと搭乗ゲートには戻れない。多分そんな時間はないとは思いつつ、意を決して受け取りゲートへ進んだ。

全員ではないが、私を含め何人かは荷物に発信タグを入れているので、荷物の動きをチェックしつつ、不安になりながらターンテーブルに現れる荷物を待った。荷物だけ飛行機に乗って行っちゃったらどうしよう、と怯えながら。

時間はすでに8:50。そろそろ搭乗が始まる頃だと思っていると、私の愛おしい緑のTNFのバッグが吐き出されてきた。

「よかったーー」

4人は喜んだ。これで指定の便に乗り遅れても、荷物が出てこなかったことを理由として使える。

次々と荷物が吐き出され、それぞれ預け荷物を手にする。しかし、1人、苦労して日本からフェザークラフトを運んできたお客様のフネが入ったバックが一向に出てこない。

大型荷物のレーンは受け取り場所の反対側。あっちへ行ったりこっちへ行ったり、フェザークラフトの黒いバッグを探すが見つからない。一般ターンテーブルは、荷物がすべて持ち去られ、静かに動きを止めてしまった。

いったいどこへ行ってしまったのか?!

すると、荷物を受け取る人がいなくなり静かになった隣のベルトコンベアに、ドスンとフェザークラフトの黒いバッグが吐き出された。

その時点で、すでに9:01だった。

とりあえず荷物を持ってSASのカウンターへ行くが、前のおっさんがグジグジ話していて一向に進まない。結局、出発時間の9:10を過ぎてから、カウンターのお母さんにチケットを見せながら、

「これ持ってるんだけど」
「荷物が出てこなくて」

と説明すると、「しょうがないわね」的な感じで対応してくれた。

「あんたたち何人?」

と聞かれ、4人だと伝えると、

「えー、一緒に乗れる飛行機、もうなさそうよー」

と不安なことを言ってきた。

今日中にトロムソにたどり着けないのは、かなりやばい。Team BとTeam Cが先にトロムソへたどり着いてしまったら、明日までどうやって待っていてもらうか。考えるだけでも恐ろしかった。

しかし、

「あ、空いてますよ」

と、4席確保してくれた。

ただし、そのチケットはオスロ発18:55、トロムソ21:00着の便だった。
今思えばバラバラの便だったらもう少し早く行けたのではないか・・・
とその時は気づかず4人分の18:55発のチケットを受け取った。

現在、朝の9:30。あと9時間、私たちはどうすればよいのか。途方に暮れてしまった。

そんな頃、Team Bはなぜかストックホルムにいた。

事前の話では、ノルウェーのベルゲン行きの飛行機に乗っているはずなのだが、Team Bより「現在スウェーデンのストックホルムに滞在中」とLINEが入る。

「??」
「なんで?」

と聞くと、

「お客さんを入れ替えているようです」

とのこと。

ヘルシンキーベルゲン便は、途中ストックホルムに寄って乗客を入れ替える便だった。こんな時に、ややこしいことを!

ただ、緊張感のないTeam Bに、おそらくベルゲンで荷物を受け取り、再度カウンターでチェックインする必要がある旨を伝え、靴の紐を結び直すように指示をする。

「もう1人はサンダルです。どうしましょう」

「裸足で走ってください」

Team Bも乗り換え時間は約1時間。急いで荷物を受け取りに行くが、預け荷物は私たちの都合に合わせて出てきてはくれない。それでも2人は各自の荷物を無事に受け取り、急いでチェックインカウンターへ走っていくと、後ろから日本語で声をかけられたそうだ。

「ト、トロムソ行きですかぁ?!」

声をかけてきたのは日本人の女性で、どうやらトロムソ在住。ノルウェー人の旦那さんとトロムソへ戻る途中、私たちと同じ目に遭って走っていたようだ。

SASのチェックインカウンターに着くと、ノルウェー人の旦那さんが手続きを進め、ついでにTeam Bのチェックインも済ませてくれたという。なんて運がいいんだ。

最終的に、1時間の乗り継ぎを奇跡的に済ませ、Team Bは無事13:20にトロムソに到着した。私たちの到着予定時刻の8時間も前に。

そしてTeam Cのシンガポールのお客様は、乗り換えに2時間半の猶予があったおかげか、ベンチで腐っているTeam Aの私たちを置き去りに、スムーズにトロムソへ向かって旅立っていった。

9時間もの間どうしようかと考えたが、オスロの中心部へ行くにもバスに乗らなければならない。物価も高く、どこへ行ってもお金ばかりかかってしまう気がして、仕方なく空港内で時間を潰すことにした。

オスロ空港内

しかし昼には腹も減ってしまい、一番安そうなピザコンボ(2枚)を買うが、198NOK、約3000円。

600円のポテトチップスを齧りながら大人しく柴田錬三郎を読むしかなかった。

久しぶりに無益な9時間を過ごし、やっとの思いで21:00にトロムソ空港へ到着した。

羽田を出発して31時間。全員が無事に、ひとつの荷物もなくさず、ノルウェー・トロムソ空港にたどり着いた。

もちろん北極圏は太陽が沈まない白夜。雲の切れ間に青空がのぞく。

しかし、私たちの目的地はさらにフィヨルドを越え、車で3時間ほどのセンジャ島南部である。

予約してあったレンタカーを受け取り、私はアクセルを踏み込み、交差点を曲がるたびにワイパーを動かしていた。

3時間のドライブは、絶景のフィヨルドを縫うように進んでいく。垂直に削られた岩壁からは雪解け水が滝となってほとばしる。白く塗られた窓枠とファールンレッドの赤い家屋の壁が北欧らしく可愛らしい。

しかし私は、慣れない右側通行とこれまでの疲労で、今にも気を失いそうになっていた。そんな景色を見る余裕もなく、たとえ目に入っても何も感じることができず、死ぬ思いでセンジャのアパートメントにたどり着いた。

お客様を宿へ送り届け、私たちはRuneのキャビンへ移動した。

時刻は2時を過ぎている。しかし太陽が沈まないので、時間の感覚を得ることができない。とにかく寝ないと明日からのツアーに支障をきたすため、アイマスクをつけ、2段ベッドに潜り込み、長い長い移動が終わった。

移動も長かったが、文章も長かった。

お互い、お疲れ様でした。

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